存じます。かような事をお奨め致すと男子側から反対が出て、女子に権利自由の思想を鼓吹するのは女子を生意気にするものだと批難せられるでしょうが、そういう批難をする男子があるのは、男子側にすら一般には憲法などに現れた新代の根本精神がまだ領解されていない証拠なのです。女子を自分と対等な位地に置くことを肯《がえん》ぜないのは、男子がそれだけ無学であるからだと私は考えて男子のために恥じております。

 近頃女子の職能を制限して結婚する事と子を生みかつ養育する事とのみにあると力説する人がありますけれど、現代の根本精神の一つである「自由討究」を重んずる私どもの心には「何故《なにゆえ》に」と叫ばざるを得ません。論ずる人の考では欧米の婦人の一部に種種の事情から結婚を厭《いと》う風のあるのを見て日本婦人を戒めるつもりでしょうが、それは白昼に幽霊の出るのを恐れるのと一般全く無用な心配です。何故《なぜ》なれば日本婦人は皆結婚を希望しております。結婚を嫌う風は少しも発生していないのです。そのくせ婚期に達した婦人の三分の二までも未婚婦人であるというのは、男子側が無財産であるために妻を迎えがたいからではありませんか。
前へ 次へ
全13ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング