体に悪いから一月に一度は来るつもりだ。別の処へ行くよりはお前の処へ来ることに決めて置かうとお云ひになつてね、それから毎月一度だけは欠かさず来て居てくれたんですよ。あの人だつてちつとも困つて居ませんでしたし、私だつて女郎の四五人も下に伴れるだけの者になつて居ましたしね。それが妙なことでこんなことになりましたのよ、やはりあの社の或方のお母様の方がね、いい人だから一遍行つて逢つて見ろつてあの人が云ふもんですから、私は検査の帰りに一寸行きますとね、人を馬鹿にした方でね、女郎が真実のことを云ふ時があるかつて、そんなことを云ふんですよ。私だつて人間ですから嘘を云ふこともありますけれど、Yさんには嘘を云ひませんよと云つて帰つて来たんですよ。Yさんがその晩来ましたから、口惜しくつて口惜しくつて仕様がないと云ひますとね、随分あれで疑ひ深いのですからね、嘘がないのなら逃げて見ろと云ふのでせう。ええ逃げますともつて逃げたんですよ。』
『年期はどれ程あるんですか。』
と私は問ひました。
『ええ、丁度二年なんですよ。』
『Y君とあなたとは何時までも一緒になつて居られる、厭になんかならないと信じ合つて居るのです
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