女が来て
與謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)海鼠《こ》の腸《わた》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一寸|一切《ひとき》り
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
×:伏せ字
(例)××新聞社
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良人は昨日来た某警察署の高等視察のした話をSさんにして居ました。私は手に卓上と云ふ茶色の表紙をした雑誌を持ちながら、初めて聞く話でしたから良人の言葉に耳を傾けて居ました。
『あの時居たYをね、あれがNさんでせうつて云ふのだよ。』
と良人は私に話を向けました。私は思はず笑ひ出しました。その高等視察が来ました時に私はKさんと云ふ人とやはりこの応接室で話をして居たのでした。私が階下へ降りると直ぐKさんも階下へ来ました。それ迄良人と話をして居たYさんも続いて階下の座敷へ来ましたから、私は今来た人が人払ひを頼んだのであらうと思つたのでした。
『Yさんが大変なお金持に見られるつて、まあね。』
『Y君が出て行くとね、あの方でせうNさんはつて云ふのだよ。』
『随分をかし
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