の途にばかり興味を持っておられるらしい今の一部の文学者の僻《へき》した御考《おかんがえ》ではありますまいか。
私は男と女とを厳しく区別して、女が特別に優れた者のように威張りたくて申すのではありません。同じく人である。唯協同して生活を営む上に互に自分に適した仕事を受持つので、児を産むから穢《けがら》わしい、戦争《いくさ》に出るから尊いというような偏頗《へんぱ》な考を男も女も持たぬように致したいと存じます。女が何で独り弱者でしょう。男も随分弱者です。日本では男の乞食《こつじき》の方が多いことを統計が示しております。男が何で独り豪《えら》いでしょう。女は子を産みます。随分男が為《な》さっても可《よ》さそうな労働を女が致しております。
一般の人はともかく、新しい文学者の諸先生が女を弱者とし、これを玩弄物《もてあそびもの》にして、対等の「人」たる価値《ねうち》を御認めにならぬのは、例えば生殖の道においてのみ交渉を御認めになるというようなのは、いまだ古い思想に縛《しば》られておられるか、または大昔の野蛮な時代の獣性を復活して新しくせられるつもりか、どちらにしても真の文明人の思想に実際到達して
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