生活が幸福に成長し得るものでないことも明白になりました。この三つの生活が協同し、連関し、融和して、初めて人間の生活はその全体の完成を期待することが出来るということを知る時代が来たのです。
これまで分裂しやすく矛盾しやすかった三つの生活の融合をどう意識的に企画すれば好いでしょうか。私は私自身の必要からこれをこう考えております。その扞格と矛盾とを除き、その分裂と衝突とを避ける方法としては三つの生活を貫いて共通の幸福となる性質を持った生活事実を全生活の価値標準とし、これに背馳する生活事実をすべて排除する外はないということです。具体的にいえば、共通の幸福となるものは愛を第一とし、経済、学問、芸術、科学等は悉く国境を超えて平等に世界人類の幸福となる性質を持っております。これらは個人をも利し、国民をも利するものでありながら、或個人または一の国民の利益のために独占して、他の個人や他の国民との間にこれがために衝突するようなことを許されない性質のものであることはいうまでもありません。
この方法を実現しようとすれば、第一に愛の世界的協同が必要になります。博愛的世界主義というか、人道的世界主義というか、
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