名はいずれにもせよ、人類が相互に愛し合い扶助し合う実行が起らねばなりません。今度の戦争で、協商国側にも連合国側にも或国民との相互扶助が行われました。それを今一段進めて世界人類の相互扶助を実現せねばなりません。西部の戦線においては敵味方の間にさえ、独仏の兵士同志は攻撃のない日に塹壕《ざんごう》から出て語り合いながら、世界人類的の親愛を感じて、何がために国民の名においてお互世界の同胞が殺し合わねばならぬかを考え、その不合理と矛盾とを痛切に悲むような例が尠《すくな》くないといいます。露西亜《ロシヤ》の過激派の行動は一見して非常識であり、その手段において極端不法であることは勿論ですが、しかしその精神は全人類的の愛から出発していることを否むことは出来ません。ケレンスキイ一派の第一革命にしても、過激派の今回の暴挙にしても、昔の仏蘭西《フランス》革命が酸鼻の跡の多いのに反して出来るだけ流血の悲劇を示さずに目的を達することに一致しております。人をより幸福に生かすことが彼らの目的である以上、如何なる名の下にも手段として人を殺すことの矛盾を避けるのが至当です。罪人に対してさえ死刑を廃止するのが正義であると
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