が出来るようになり、男子の我儘な掠奪を免れることを得たのみならず、反対に男子をして愛情のために歓心を女子に求めしむるに到った。女が男子を選択する位置に就《つ》いた。上古の歌は概《おおむ》ね男子がその切《せつ》ない心を女に伝うる機関であった。
女が心を許した一人の男子を守ろうとしても、男の心は一時その女に傾くのみで、時が経《た》てば変化して新しい女を好んで遠《とおざ》かって行き、入り代って他の男が女の心を得ようと努める。男が多妻であると同時に女もまた勢い多夫とならざるを得ないのである。
従って女は依然として異父の子女を一家の中で育てていた。
しかし家があれば家長として子女を養う家産を尊重せねばならぬ事を感じるに至り、女は経済上の事情から多くの子女を挙げる事を避けたに違いない。また父を異にした子女の間に感情の齟齬《そご》が多くて一家の平和を破る事にも気が附いたに違いない。
また一方に種族の階級が隔たるほど、女が劣等な男子を聟にすることは恥辱《ちじょく》である。自然男子を選択する風が行われて、前代の如く男子の我儘に従って雑婚することが少くなって行ったに違いない。
以上、宗教上に処女
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