、延《ひ》いては一家の協同生活を危くし、社会の幸福をも害《そこな》う結果が予想せられる。
学者は種の保存の上からも女子の貞操は太切《たいせつ》であるという。学説としてはそうでもあろうが、自分にはまだ夫婦の血族を保存するために貞操を守ろうとする自覚はない。それよりも自分のように純潔を貴ぶ性情を基礎としてさえいれば自然に種の保存の意義にも一致する結果になると思う。
以上は専ら自分にのみついて述べた。これを自分だけの経験から出発した特殊の貞操観であって、一般の婦人たちに及ぼしがたいものである事は勿論知っている。世の中の婦人の大多数は貞操の堅固な人たちである。自分はその一人一人の特殊な貞操観を聞きたい。
また再婚をする婦人の心持、良人を定めずして多数の異性に接する稼業《かぎょう》の女の心持などは、どういう所に心の平衡を取って自己を安んじ羞恥《しゅうち》を抑《おさ》えていることが出来るのか、それらについても経験を聞きたい。
未亡人というものは故人|某《なにがし》の妻である。それが再嫁をするということは法律上に姦通ではないにしても、本人の心持は疚《やま》しくないものであろうか。未亡人の貞操
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