観というものも赤裸裸に語る人があって欲しい。
 また男子の貞操観をも聞きたいものであるが、それは男子自身の正直な告白を待つより外はない。しかし自分の想像では、男子は生理的に女子とよほど異《ちが》った所があって、処女には性欲の自発がないにかかわらず、若い男子にはそれが反対に熾《さかん》であるらしい。(十月の雑誌『三田文学《みたぶんがく》』の谷崎氏の小説はその一例である。)また婦人は早く老いやすいにかかわらず、男子は七十歳の老人にも好色の噂《うわさ》を聞く例《ためし》が多い。特殊な男子を除き、一般大多数の男子がそうであるなら、男子の貞操はよほど趣を異にせねばならぬはずである。男子は貞操を守るに堪えないともいわれよう。
 それとも、将来は教養ある男子が殖えるに従って、自己の純潔を貴ぶため、家庭の平和を欲するため、放縦《ほうしょう》な性欲を自制して一夫一婦主義を女子と同じく尊重し実践するようになるであろうか。また反対に女子もまた刺激に憬《あこが》れる心や食物その他の変革から従来の体質を漸次一変して性交の欲望を自発し、併《あわ》せて男子と斉しく老ゆることも遅くなるであろうか。最後に述べて置く、自
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