さやんの叔母が何時《いつ》も云ひますのを、私は小い時分から真似して其《その》通りのことを云つて居ました。それにおさやんは龍源《たつげん》の叔母の子として一番大きい子で、私は兄弟の中で末つ子に近い方でしたから、一方は大人びて私は子供々々しくて三月と十二月の違ひばかりでなくおさやんは私を妹あつかひにして居ました。おさやんの家は酒屋でした。なつかしい、気の好《い》い遊び相手だつたおさやんを思ひますとまづ目に山のやうに高い大きい酒樽《さかだる》の並んだ幻影《まばろし》が見えます。光線を多く取つてない私の郷里などの古い建築法で造られた家は、中の土間へ入ると冬でも夏でも冷々《ひや/\》とした風が裾から起つて来るのでした。中浜通りの小林寺町《せうりんじちやう》と云ふ所にそのおさやんの家はありました。私は大抵の場合自分の家の「べい」と私が極く小い時分から私だけの特殊な呼名を附けて居た老いた女中と一所《いつしよ》に龍源へ行きました。もう一人の叔母の家がその二三町先にありまして、私は其処《そこ》へ行つた帰りを龍源へ寄るのが例でした。黒くなつた大きい酒屋看板を遠くから見て私の小い胸は先づ轟《とゞろ》いたもの
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