あかし》の美くしさ、ほのぼのと晴れる朝霧の中の、神輿倉の七八つも並んだ神輿の金のきらきらと光つて居るのを見る快さは、忘れられないものです。蓮池の蓮を見たり、鯉に餌《ゑ》を遣《や》つたりしますことも、何時《いつ》も程落ついては出来ません。気が急いで大和川《やまとがは》を渡る時も、川上の景色、川口の水の色を眺めたりすることも出来ません。朝御飯を食べますともう住吉踊が来ます。
すみようしさんまいの
と拍子ごとに云ふ踊で、姿は白衣《びやくえ》に腰衣《こしごろも》を穿いた所化《しよけ》を装つて居るのです。踊手は三人程で、音頭とりが長い傘をさして真中に立ち、その傘の柄を木で叩くのが拍子なのです。私等はこの時には大鳥さんの宵宮の晩に着た浴衣を着て居ます。昼間浴衣を着て人の怪まないのは夏中でこの日だけ位なものです。この日も晴着に着替へますのは、やはり二三時頃のことです。縮緬《ちりめん》が多く着られます。薄色の透綾も着られます。錦《にしき》の帯、繻珍《しゆちん》の帯が多くしめられます。緋縮緬や水色縮緬のしごきがその帯の上から多く結ばれます。けれども私等のやうな男作りの子は割合軽々とした姿で居ます。
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