ょうなごん》も珍しい物の中に引いている通りむしろ例外であって、「あなたは善い姑をお持ちになってお仕合せです」と嫁の友人から祝を述べるほどのことである。固《もと》より姑根性には種種《いろいろ》あって某工学士の母の実際はどうであるか知らないが、最も極端な例に引かれる残忍な姑さえ決して世間に珍しくはないのであるから、それ以外の、あるいは悪性、あるいは不良な程度の姑は無数に散在している。官吏や被傭人となって他郷に生活している若夫婦の中には父母と別居している者が多く、それらは直接に姑の干渉を受けないであろうが、しかし某工学士夫婦のように横浜と神戸とに別居していてすら前述のような惨事を引起したのであるから、如何に遠く離れて住んでいても聡明な愛情を欠いた姑に対する嫁の気兼《きがね》苦労は多少にかかわらず附帯しているのである。まして姑と一所に定住している大多数の嫁がそれらの姑の下にあるいは干渉され、あるいは苛《いじ》められ、あるいは意地悪く一分《いちぶ》だめしに精神的に虐殺されつつあるのは言うまでもない。
 私は自分の息子《むすこ》のように嫁を愛し、あるいは蔭に廻って嫁を弁護するほどの美質を持った理想
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