行つたのである。
荷物が皆配達されて鏡子はおもちや類を子供に分けた。双子《ふたご》と千枝子は揃ひの人形、滿と健と薫はバロンの毬《たま》、晨は熊のおもちや、榮子は姉達のより少し小《ちいさ》いだけの同じ人形を貰つた。
『まだあるの、けれど鞄の中で他の物に包んだりしてあるのだから後《あと》で出して上げます。千枝ちやんや、瑞木さんや、花木さんの洋服もあるのよ。』
と鏡子は云つた。
『僕には何があるの、外に。』
と健が云つた。
『さあ何だつたかねえ。』
『母《かあ》さん、兄《にい》さんはもう要《い》らないのね、絵具箱があるのだもの。』
『そんな事ありませんね、母《かあ》さん。』
『いいんだ。いいんだ。』
『やかましい、健。』
と滿が云ふと、
『いやあ。』
と健が泣き出した。
『瑞木ちやんの人形の方がいいのよ、とり替へて頂戴よ。』
と花木が云ふ。
『いやよ、いやよ。』
と瑞木が泣声で云つて居る。鏡子は周章《あわたゞ》しい世界へ帰つて来たと夢から醒めた時のやうな息をして子供達を見て居た。
『後程《のちほど》また伺ひます。』
清は薫のバロンを持つて、千枝子だけを残して帰つた。鏡子はふと
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