帰つてから
與謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)此方《こちら》へ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)荒木|英也《ひでや》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「月+齶のつくり」、第3水準1−90−51]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すが/\
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浜松とか静岡とか、此方《こちら》へ来ては山北とか、国府津とか、停車する度に呼ばれるのを聞いても、疲労し切つた身体《からだ》を持つた鏡子《かねこ》の鈍い神経には格別の感じも与へなかつたのであつたが、平沼《ひらぬま》と聞いた時にはほのかに心のときめくのを覚えた。それは丁度ポウトサイド、コロンボと過ぎて新嘉坡《しんがぽうる》に船の着く前に、恋しい子供達の音信《たより》が来て居るかも知れぬと云ふ望《のぞみ》に心を引かれたのと一緒で自身のために此処《こゝ》迄来て居る身内のあるのを予期して居たからである。鏡子《かねこ》の伴《つれ》は文榮堂書肆の主人の畑尾《はたを》と
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