に切実な重大問題であるのに、如何なる場合にも団子より花が大切だ、上品だというような融通の利《き》かない迷信があるので、どれだけ人生の健かな発達を阻害しているか知れない。
*
私は学者の議論が直ぐに人類全体の実際生活を改造することに役立つものであるような誤解を近頃までしていた。そして実際に役立つものでなくては最早現代の学問ではないように誤解していた。しかし学者は人生または自然の一方を常に凝視して未知の新事業を発見することに努力し、永遠の時を少しでも早く手繰《たぐ》り寄せて現代の生活に貢献しようとしているものである。学者は永遠の中に住んでいる。現代に住んで現代を超越しているのが学者の境地である。芸術家もまた同様の境地にいる永遠の子である。学者や芸術家の事業には勿論そのまま現代の幸福となる種類のものもないではないが、常に永遠の上に一方を凝視して得た思想である以上、それが局限せられた当面の時と、智識の度の千差万別である現代の全人類とに皆が皆適用しがたいのは当然である。私は学者や芸術家を尊敬する。しかし学者や芸術家の思想からその現代に実行し得るものだけを選択して自己の生活の改
前へ
次へ
全25ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング