、いっそう騒然と、立ちのぼった。
沙金《しゃきん》は、月を仰ぎながら、稲妻のごとく眉《まゆ》を動かした。
「しかたがないわね。じゃ、わたしたちだけ帰りましょう。」
そういう話のまだ終わらないうちに、そうして、次郎がそれを聞かないもののように、再び指を口に含んで相図を吹こうとした時に、盗人たちの何人かが、むらむらと備えを乱して、左右へ分かれた中から、人と犬とが一つになって、二人の近くへ迫って来た。――と思うと、沙金の手に弓返《ゆがえ》りの音がして、まっさきに進んだ白犬が一頭、たかうすびょうの矢に腹を縫われて、苦鳴と共に、横に倒れる。見る間に、黒血がその腹から、斑々《はんぱん》として砂にたれた。が、犬に続いた一人の男は、それにもおじず、太刀をふりかざして、横あいから次郎に切ってかかる。その太刀が、ほとんど無意識に受けとめた、次郎の太刀の刃を打って、鏘然《そうぜん》とした響きと共に、またたく間《あいだ》、火花を散らした。――次郎はその時、月あかりに、汗にぬれた赤ひげと切り裂かれた樺桜《かばざくら》の直垂《ひたたれ》とを、相手の男に認めたのである。
彼は直下《じきげ》に、立本寺《りゅうほ
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