んじ》の門前を、ありありと目に浮かべた。そうして、それと共に、恐ろしい疑惑が、突然として、彼を脅かした。沙金《しゃきん》はこの男と腹を合わせて、兄のみならず、自分をも殺そうとするのではあるまいか。一髪の間《かん》にこういう疑いをいだいた次郎は、目の前が暗くなるような怒りを感じて、相手の太刀《たち》の下を、脱兎《だっと》のごとく、くぐりぬけると、両手に堅く握った太刀を、奮然として、相手の胸に突き刺した。そうして、ひとたまりもなく倒れる相手の男の顔を、したたか藁沓《わろうず》でふみにじった。
 彼は、相手の血が、生暖かく彼の手にかかったのを感じた。太刀の先が肋《あばら》の骨に触れて、強い抵抗を受けたのを感じた。そうしてまた、断末魔の相手が、ふみつけた彼の藁沓《わろうず》に、下から何度もかみついたのを感じた。それが、彼の復讐心《ふくしゅうしん》に、快い刺激を与えたのは、もちろんである。が、それにつれて、彼はまた、ある名状しがたい心の疲労に、襲われた。もし周囲が周囲だったら、彼は必ずそこに身を投げ出して、飽くまで休息をむさぼった事であろう。しかし、彼が相手の顔をふみつけて、血のしたたる太刀を向
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