したか、わかりません。が、事によると、――まあそれもあの人の事だから、万々《ばんばん》大丈夫だろうと思いますがな。」
次郎は、顔をそむけながら、沙金のそばを離れた。が、小盗人《こぬすびと》はもちろんそんな事は、気にとめない。
「それにおじじやおばばまで、手を負ったようでした。あのぶんじゃ殺されたやつも、四五人はありましょう。」
沙金はうなずいた。そうして次郎のあとから追いかけるように、険のある声で、
「じゃ、わたしたちもひき上げましょう。次郎さん、口笛を吹いてちょうだい。」と言った。
次郎は、あらゆる表情が、凝り固まったような顔をしながら、左手の指を口へ含んで、鋭く二声、口笛の音を飛ばせた。これが、仲間にだけ知られている、引き揚げの時の合図である。が、盗人たちは、この口笛を聞いても、踵《くびす》をめぐらす様子がない。(実は、人と犬とにとりかこまれてめぐらすだけの余裕がなかったせいであろう。)口笛の音は、蒸し暑い夜の空気を破って、むなしく小路《こうじ》の向こうに消えた。そうしてそのあとには、人の叫ぶ声と、犬のほえる声と、それから太刀《たち》の打ち合う音とが、はるかな空の星を動かして
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