は、一足あとへとびのきながら、ふりむかった血刀の下に、全身の筋肉が一時にゆるむような気落ちを感じて、月に黒く逃げてゆく相手の後ろ姿を見送った。そうしてそれと共に、悪夢からさめた人のような心もちで、今自分のいる所が、ほかならない立本寺《りゅうほんじ》の門前だという事に気がついた。――
 これから半刻《はんとき》ばかり以前の事である。藤判官《とうほうがん》の屋敷を、表から襲った偸盗《ちゅうとう》の一群は、中門の右左、車宿りの内外《うちそと》から、思いもかけず射出した矢に、まず肝を破られた。まっさきに進んだ真木島《まきのしま》の十郎が、太腿《ふともも》を箆深《のぶか》く射られて、すべるようにどうと倒れる。それを始めとして、またたく間《ま》に二三人、あるいは顔を破り、あるいは臂《ひじ》を傷つけて、あわただしく後ろを見せた。射手《いて》の数《かず》は、もちろん何人だかわからない。が、染め羽白羽のとがり矢は、中には物々しい鏑《かぶら》の音さえ交えて、またひとしきり飛んで来る。後ろに下がっていた沙金《しゃきん》でさえ、ついには黒い水干《すいかん》の袖《そで》を斜めに、流れ矢に射通された。
「お頭《か
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