しら》にけがをさすな。射ろ。射ろ。味方の矢にも、鏃《やじり》があるぞ。」
 交野《かたの》の平六《へいろく》が、斧《おの》の柄《え》をたたいて、こうののしると、「おう」という答えがあって、たちまち盗人の中からも、また矢叫《やたけ》びの声が上がり始める。太刀《たち》の柄《つか》に手をかけて、やはり後ろに下がっていた次郎は、平六のこのことばに、一種の苛責《かしゃく》を感じながら、見ないようにして沙金の顔を横からそっとのぞいて見た。沙金は、この騒ぎのうちにも冷然とたたずみながら、ことさら月の光にそむきいて、弓杖《ゆんづえ》をついたまま、口角の微笑もかくさず、じっと矢の飛びかうのを、ながめている。――すると、平六が、またいら立たしい声を上げて、横あいから、こう叫んだ。
「なぜ十郎を捨てておくのじゃ。おぬしたちは矢玉が恐ろしゅうて、仲間を見殺しにする気かよ。」
 太腿《ふともも》を縫われた十郎は、立ちたくも立てないのであろう、太刀《たち》を杖《つえ》にして居ざりながら、ちょうど羽根をぬかれた鴉《からす》のように、矢を避け避け、もがいている。次郎は、それを見ると、異様な戦慄《せんりつ》を覚えて、思
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