朽ち葉色の水干《すいかん》とうす紫の衣《きぬ》とが、影を二つ重ねながら、はればれした笑い声をあとに残して、小路《こうじ》から小路へ通りすぎる。めまぐるしい燕《つばくら》の中に、男の黒鞘《くろざや》の太刀《たち》が、きらりと日に光ったかと思うと、二人はもう見えなくなった。
 太郎は、額を曇らせながら、思わず道ばたに足をとめて、苦しそうにつぶやいた。
「どうせみんな畜生だ。」

       六

 ふけやすい夏の夜《よ》は、早くも亥《い》の上刻《じょうこく》に迫って来た。――
 月はまだ上らない。見渡す限り、重苦しいやみの中に、声もなく眠っている京《きょう》の町は、加茂川の水面《みのも》がかすかな星の光をうけて、ほのかに白く光っているばかり、大路小路の辻々《つじつじ》にも、今はようやく灯影《ほかげ》が絶えて、内裏《だいり》といい、すすき原といい、町家《まちや》といい、ことごとく、静かな夜空の下に、色も形もおぼろげな、ただ広い平面を、ただ、際限もなく広げている。それがまた、右京左京《うきょうさきょう》の区別なく、どこも森閑と音を絶って、たまに耳にはいるのは、すじかいに声を飛ばすほととぎすの
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