ごうぜん》とこう独《ひと》り語《ごと》を言った。――「ナポレオンでも蚤《のみ》に食われた時は痒《かゆ》いと思ったのに違いないのだ。」
或左傾主義者
彼は最左翼の更に左翼に位していた。従って最左翼をも軽蔑《けいべつ》していた。
無意識
我我の性格上の特色は、――少くとも最も著しい特色は我我の意識を超越している。
矜誇
我我の最も誇りたいのは我我の持っていないものだけである。実例。――Tは独逸語《ドイツご》に堪能《たんのう》だった。が、彼の机上にあるのはいつも英語の本ばかりだった。
偶像
何びとも偶像を破壊することに異存を持っているものはない。同時に又彼自身を偶像にすることに異存を持っているものもない。
又
しかし又泰然と偶像になり了《おお》せることは何びとにも出来ることではない。勿論天運を除外例としても。
天国の民
天国の民は何よりも先に胃袋や生殖器を持っていない筈《はず》である。
或仕合せ者
彼は誰よりも単純だった。
自己嫌悪
最も著しい自己嫌悪の徴候はあらゆるものに※[#「言+墟のつくり」
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