は確かに動物的である。

   或才子

 彼は悪党になることは出来ても、阿呆になることは出来ないと信じていた。が、何年かたって見ると、少しも悪党になれなかったばかりか、いつも唯《ただ》阿呆に終始していた。

   希臘人

 復讐《ふくしゅう》の神をジュピタアの上に置いた希臘人《ギリシアじん》よ。君たちは何も彼も知り悉《つく》していた。

   又

 しかしこれは同時に又如何に我我人間の進歩の遅いかと云うことを示すものである。

   聖書

 一人の知慧《ちえ》は民族の知慧に若《し》かない。唯もう少し簡潔であれば、……

   或孝行者

 彼は彼の母に孝行した、勿論《もちろん》愛撫《あいぶ》や接吻《せっぷん》が未亡人だった彼の母を性的に慰めるのを承知しながら。

   或悪魔主義者

 彼は悪魔主義の詩人だった。が、勿論実生活の上では安全地帯の外に出ることはたった一度だけで懲《こ》り懲《ご》りしてしまった。

   或自殺者

 彼は或|瑣末《さまつ》なことの為に自殺しようと決心した。が、その位のことの為に自殺するのは彼の自尊心には痛手だった。彼はピストルを手にしたまま、傲然《
前へ 次へ
全83ページ中77ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング