狂信者のように獰猛《どうもう》に戦うことは出来ない。
宿命
宿命は後悔の子かも知れない。――或は後悔は宿命の子かも知れない。
彼の幸福
彼の幸福は彼自身の教養のないことに存している。同時に又彼の不幸も、――ああ、何と云う退屈さ加減!
小説家
最も善い小説家は「世故《せこ》に通じた詩人」である。
言葉
あらゆる言葉は銭のように必ず両面を具《そな》えている。例えば「敏感な」と云う言葉の一面は畢竟《ひっきょう》「臆病《おくびょう》な」と云うことに過ぎない。
或物質主義者の信条
「わたしは神を信じていない。しかし神経を信じている。」
阿呆
阿呆はいつも彼以外の人人を悉《ことごと》く阿呆と考えている。
処世的才能
何と言っても「憎悪する」ことは処世的才能の一つである。
懺悔
古人は神の前に懺悔《ざんげ》した。今人は社会の前に懺悔している。すると阿呆や悪党を除けば、何びとも何かに懺悔せずには娑婆苦《しゃばく》に堪えることは出来ないのかも知れない。
又
しかしどちらの懺悔にしても、どの位信用出来
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