《にゅうび》を食している。最後に難陀婆羅《なんだばら》と伝えられる牧牛の少女と話している。
政治的天才
古来政治的天才とは民衆の意志を彼自身の意志とするもののように思われていた。が、これは正反対であろう。寧《むし》ろ政治的天才とは彼自身の意志を民衆の意志とするもののことを云うのである。少くとも民衆の意志であるかのように信ぜしめるものを云うのである。この故に政治的天才は俳優的天才を伴うらしい。ナポレオンは「荘厳と滑稽との差は僅《わず》かに一歩である」と云った。この言葉は帝王の言葉と云うよりも名優の言葉にふさわしそうである。
又
民衆は大義を信ずるものである。が、政治的天才は常に大義そのものには一文の銭をも抛《なげう》たないものである。唯民衆を支配する為には大義の仮面を用いなければならぬ。しかし一度用いたが最後、大義の仮面は永久に脱することを得ないものである。もし又強いて脱そうとすれば、如何なる政治的天才も忽《たちま》ち非命に仆《たお》れる外はない。つまり帝王も王冠の為におのずから支配を受けているのである。この故に政治的天才の悲劇は必ず喜劇をも兼ねぬことはない。たと
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