家のように寧《むし》ろ※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]には巧みだった。が、いつも彼女には一籌《いっちゅう》を輸《ゆ》する外はなかった。彼女は実に去年の※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]をも五分前の※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]のように覚えていた。
又
わたしは不幸にも知っている。時には※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]に依る外は語られぬ真実もあることを。
諸君
諸君は青年の芸術の為に堕落することを恐れている。しかしまず安心し給え。諸君ほどは容易に堕落しない。
又
諸君は芸術の国民を毒することを恐れている。しかしまず安心し給え。少くとも諸君を毒することは絶対に芸術には不可能である。二千年来芸術の魅力を理解せぬ諸君を毒することは。
忍従
忍従はロマンティックな卑屈である。
企図
成すことは必しも困難ではない。が、欲することは常に困難である。少くとも成すに足ることを欲するのは。
又
彼等の大小を知らんとするものは彼等の成したことに依り、彼等の成さんとしたことを見なければならぬ。
兵卒
理想的兵卒は苟《いやし》くも上官の命令には絶対に服従しなければならぬ。絶対に服従することは絶対に批判を加えぬことである。即ち理想的兵卒はまず理性を失わなければならぬ。
又
理想的兵卒は苟くも上官の命令には絶対に服従しなければならぬ。絶対に服従することは絶対に責任を負わぬことである。即ち理想的兵卒はまず無責任を好まなければならぬ。
軍事教育
軍事教育と言うものは畢竟《ひっきょう》只《ただ》軍事用語の知識を与えるばかりである。その他の知識や訓練は何も特に軍事教育を待った後に得られるものではない。現に海陸軍の学校さえ、機械学、物理学、応用化学、語学等は勿論《もちろん》、剣道、柔道、水泳等にもそれぞれ専門家を傭《やと》っているではないか? しかも更に考えて見れば、軍事用語も学術用語と違い、大部分は通俗的用語である。すると軍事教育と言うものは事実上ないものと言わなければならぬ。事実上ないものの利害得失は勿論問題にはならぬ筈《はず》である。
勤倹尚武
「勤倹尚武」と言う成語位、無意味を極めているものはない。尚武は国際的
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