を感ずるとは、よく聞くところであるが、結婚のみならず人生は総て幻滅の連続であらうと思ふ。結婚前の陶酔した恋愛とても、その過程《プロセス》の中には幾多の幻滅があるし、結婚後の永い生活の間にも屡々幻滅を感ずる。幻滅のない恒久性の愛といふものは考へられない。この点から私はホリデイラヴ、即ち一週間に一度の恋愛を主張する。
又、結婚後に幻滅を感じたら、その上、不愉快な生活を続けるよりも離婚したらよい。商事契約に於て、解約すれば権利も義務もなくなり全然無関係となるやうな具合に、結婚や離婚に対しても、もつとあつさり[#「あつさり」に傍点]考へたい。離婚や再婚を罪悪視するのは余りにこだは[#「こだは」に傍点]つた考へ方であると思ふ。況《いは》んや見合ひなどした際、どちらか一方が幻滅を感じたにも拘らず、当座の義理や体裁から、これを有耶無耶《うやむや》に葬つて結婚するなどに至つては笑止の極《きはみ》であると思ふ。
媒酌と自由との調和
いかに自分は仁慈《じんじ》の君主であるか、いかに自分は天意を受けて君主の寵位に在るものであるかを、どうして国民に知らしめようかしらと苦心した帝王が東洋の昔にも西洋の
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