ぜかは僕の知る所ではない。何の為かも僕には不可解である。しかし現代日本文学全集と云ひ、明治大正文学全集と云ふ文芸上の総決算は勿論、明治大正名作展覧会も亦やはり絵画上の総決算である。僕はこれ等の総決算を見、如何に独創と云ふことの困難であるかと云ふことを感じた。古人の糟粕《さうはく》を嘗《な》めないなどとは誰でも易々と放言し易い。が、彼等の仕事を見ると、(或は仕事を見てもかも知れない。)今更のやうに独創と云ふことの手軽に出来ないのを感じるのである。
 僕等はたとひ意識しないにもせよ、いつか前人の蹤《あと》を追つてゐる。僕等の独創と呼ぶものは僅かに前人の蹤を脱したのに過ぎない。しかもほんの一歩位、――いや、一歩でも出てゐるとすれば、度たび一時代を震《ふる》はせるのである。のみならず故意に叛逆すれば、愈《いよいよ》前人の蹤を脱することは出来ない。僕は義理にも芸術上の叛逆に賛成したいと思ふ一人である。が、事実上[#「事実上」に傍点]叛逆者は決して珍らしいものではない。或は前人の蹤を追つたものよりも遙かに多いことであらう。彼等は成程叛逆した。しかし何に叛逆するかをはつきりと感じて[#「感じて」に傍
前へ 次へ
全110ページ中105ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング