点]ゐなかつた。大抵彼等の叛逆は前人よりも前人の追従者に対する叛逆である。若し前人を感じてゐた[#「感じてゐた」に傍点]とすれば、――彼等はそれでも反叛《はんぱん》したかも知れない。けれどもそこには必然に前人の蹤を残してゐるであらう。伝説学者は海彼岸《かいひがん》の伝説の中に多数の日本の伝説のプロトタイプを発見してゐる。芸術も亦|穿鑿《せんさく》して見れば、やはり粉本《ふんぽん》に乏しくない。(僕は前にも言つたやうに必しも作家たちは彼等の粉本を用ひてゐないことを意識してゐなかつたことを信じてゐる。)芸術の進歩も――或は変化も如何に大人物を待つたにもせよ、一足飛びには面目を改めないのである。
しかしこの遅い歩みの中にも多少の変化を試みたものは僕等の尊敬に価してゐる。(菱田春草《ひしだしゆんさう》はこの一人だつた。)新時代の青年たちは独創の力を信じてゐるであらう。僕はそのいやが上にも信じることを望んでゐる。多少の変化はそこ以外にどこにも生じて来るものではない。昔から世界には前人の造つた大きな花束が一つあつた。その花束へ一本の花を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−
前へ
次へ
全110ページ中106ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング