蹶起《けっき》したる新鋭気鋭の青年にあらずや。君自身これが染上《そめあ》げを扶《たす》け、君自身これを赤大根と罵《ののし》る、無情なるも亦甚しいかな。君|聴《き》け、啾啾《しうしう》赤大根の哭《こく》、文壇の夜気を動かさんとするを。然れども古人言へることあり。「英雄|豈《あに》児女の情なからんや」と。山客亦厳に江口君が有情の人たるを信ぜんと欲す。もし有情の人と做《な》さんか、君と雖《いへど》も遂に赤大根のみ。君と雖も遂に赤大根のみ。
[#地から2字上げ]瑯※[#「王+牙」、187−下−3]山客《らうやさんかく》
[#地から1字上げ](大正十二年三月)
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田中純君は「文芸春秋」のゴシツプの卑俗に陥るを論難し、「古今の文人、誰か陽物《やうぶつ》の大小を云々せんや」と言へり。我等も亦田中君の義憤に声援するを辞するものにあらず。然れども卑俗なるゴシツプを喜べるは古人も亦今人に劣らざりしが如し。谷三山《たにさんざん》、森田|節斎《せつさい》両家の筆談を録せる「二家筆談」と言ふ書ある由、(三山は聾《つんぼ》なりし故なり。)我等は未だその書を見ねど、市島春城《いちじましゆんじやう》
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