ウせれば、彼程鋭い技巧家は少い。評論がポオの再来と云ふのは、確《たしか》にこの点でも当つてゐる。その上彼が好んで描《ゑが》くのは、やはりポオと同じやうに、無気味《ぶきみ》な超自然の世界である。この方面の小説家では、英吉利《イギリス》に Algernon Blackwood があるが、到底《たうてい》ビイアスの敵ではない。(二)彼は又批評や諷刺詩《ふうしし》を書くと、辛辣無双《しんらつむさう》な皮肉家である。現にレジンスキイと云ふ、確か波蘭土《ポオランド》系の詩人の如きは、彼の毒舌に翻弄《ほんろう》された結果自殺を遂げたと云はれてゐる。が、彼の批評を読めば、精到の妙はないにしても、犀利《さいり》の快には富んでゐると思ふ。(三)彼は同時代の作家の中では、最もコスモポリタンだつた。南北戦争に従軍した事もある。桑港《サンフランシスコ》の雑誌の主筆をした事もある。倫敦《ロンドン》に文を売つてゐた事もある。しかも彼は生きたか死んだか、未《いまだ》に行方《ゆくへ》が判然しない。中には彼の悪口《あくこう》が、余りに人を傷けた為め暗殺されたのだと云ふものもある。(四)彼の著書には十二巻の全集がある。短篇
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