一文字《いちもんじ》に舞ひ上《あが》る。と、その後《うしろ》から一羽の梟《ふくろふ》が――いや、これは婆さんの飼ひ猫が何時《いつ》の間《ま》にか翼を生やしたのかも知れない。
金魚
うす日の光がさして来ると、藻に立つた秋も目立つやうになつた。おれは、――所々|鱗《うろこ》の剥《は》げた金魚は、やがてはこの冷たい水の上に、屍《むくろ》を曝《さら》す事になるのかも知れない。しかしさう云ふ最後の日までは、やはり先の切れた尾を振りながら、あの洒落者《しやれもの》のブラムメルのやうに、悠々と泳いでゐようと思ふ。
兎
今昔物語《こんじやくものがたり》巻五《まきのご》、三獣行菩薩道兎焼身語《さんじうぼさつのみちをおこなひうさぎみをやくものがたり》と云ふ 〔Ja_taka〕 の中に、こんなお前の肖像画がある。――「兎は励みの心を発《おこ》して、……耳は高く※[#「やまいだれ+區」、第4水準2−81−70]《くぐ》せにして、目は大きく前の足短く、尻の穴は大きく開いて、東西南北求め歩けども、更に求め得たるものなし……」
雀
これは南画《なんぐわ》だ。蕭々《せう
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