ん」、第3水準1−14−75]が、混つた土の※[#「均−土へん」、第3水準1−14−75]と一しよに、しつとりと冷たく動いてゐる。その中にうす甘い※[#「均−土へん」、第3水準1−14−75]のするのは、人知れず木《こ》の間《ま》に腐つて行《ゆ》く花や果物の香《かを》りかも知れない。と思へば路ばたの水たまりの中にも、誰が摘んで捨てたのか、青ざめた薔薇《ばら》の花が一つ、土にもまみれずに※[#「均−土へん」、第3水準1−14−75]つてゐた。もしこの秋の※[#「均−土へん」、第3水準1−14−75]の中に、困憊《こんぱい》を重ねたおれ自身を名残りなく浸《ひた》す事が出来たら――
おれは思はず足を止めた。
おれの行《ゆ》く手には二人《ふたり》の男が、静に竹箒《たかぼうき》を動かしながら、路上に明《あかる》く散り乱れた篠懸《すずかけ》の落葉を掃いてゐる。その鳥の巣のやうな髪と云ひ、殆《ほとん》ど肌も蔽はない薄墨色《うすずみいろ》の破れ衣《ころも》と云ひ、或は又|獣《けもの》にも紛《まが》ひさうな手足の爪の長さと云ひ、云ふまでもなく二人とも、この公園の掃除をする人夫《にんぷ》の類《たぐひ》
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