牛へん+建」、第3水準1−87−71]陀多は大きな声を出して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己《おれ》のものだぞ。お前たちは一体誰に尋《き》いて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と喚《わめ》きました。
その途端でございます。今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、急に※[#「牛へん+建」、第3水準1−87−71]陀多のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて断《き》れました。ですから※[#「牛へん+建」、第3水準1−87−71]陀多もたまりません。あっと云う間《ま》もなく風を切って、独楽《こま》のようにくるくるまわりながら、見る見る中に暗の底へ、まっさかさまに落ちてしまいました。
後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。
三
御釈迦様《おしやかさま》は極楽の蓮池《はすいけ》のふちに立って、この一部|始終《しじゆう》をじっと見ていらっしゃいましたが、やがて※[#「牛へん+建」、第3水準1−87−71]陀多《かんだた》が血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶら
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