い羽根《はね》に青い光沢《くわうたく》を持つてゐるミノルカ種《しゆ》の庭鳥にそつくりだつた。のみならず何か※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]冠《とさか》らしいものもちらりと見えたのに違ひなかつた。
しかし庭鳥と思つたのはKさんにはほんの一瞬間だつた。Kさんはそこに佇《たたず》んだまま、あつけにとられずにはゐられなかつた。その畠へころげこんだものは実は今汽車に轢《ひ》かれた二十四五の男の頭だつた。
三 武さん
武《たけ》さんは二十八歳の時に何かにすがりたい慾望を感じ、(この慾望を生じた原因は特にここに言はずともよい。)当時名高い小説家だつたK先生を尋ねることにした。が、K先生はどう思つたか、武さんを玄関の中へ入れずに格子《かうし》戸越しにかう言ふのだつた。
「御用向きは何ですか?」
武さんはそこに佇《たたず》んだまま、一部始終《いちぶしじゆう》をK先生に話した。
「その問題を解決するのはわたしの任ではありません。Tさんのところへお出でなさい。」
T先生は基督《キリスト》教的色彩を帯びた、やはり名高い小説家だつた。武さんは早速《さつそく》その日のうちにT先生を
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