―すなわちわたしたちの精神的飛躍の空中に捉《とら》えた花束ばかりである。L'home est rien と言わないにもせよ、わたしたちは「人として」は格別大差のあるものではない。「人として」のボオドレエルはあらゆる精神病院に充《み》ち満ちている。ただ「悪の華《はな》」や「小さい散文詩」は一度も彼らの手に成ったことはない。
五 2+2=4
2+2=4ということは真実である。しかし事実上|+《プラス》の間に無数の因子のあることを認めなければならぬ。すなわちあらゆる問題はこの+のうちに含まれている。
六 天国
もし天国を造り得るとすれば、それはただ地上にだけである。この天国はもちろん茨《いばら》の中に薔薇《ばら》の花の咲いた天国であろう。そこにはまた「あきらめ」と称する絶望に安んじた人々のほかには犬ばかりたくさん歩いている。もっとも犬になることも悪いことではない。
七 懺悔《ざんげ》
わたしたちはあらゆる懺悔《ざんげ》にわたしたちの心を動かすであろう。が、あらゆる懺悔の形式は、「わたしのした[#「した」に傍点]ことをしないように。わたしの言う[
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