イヤモンド》がついている。
第二の盗人 おれのマントルも立派《りっぱ》な物じゃないか? これをこう着た所は、殿様のように見えるだろう。
第一の盗人 この剣も大した物だぜ。何しろ柄《つか》も鞘《さや》も黄金《きん》だからな。――しかしああやすやす欺《だま》されるとは、あの王子も大莫迦《おおばか》じゃないか?
第二の盗人 しっ! 壁に耳あり、徳利《とくり》にも口だ。まあ、どこかへ行って一杯やろう。
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三人の盗人は嘲笑《あざわら》いながら、王子とは反対の路へ行ってしまう。
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        二

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「黄金《きん》の角笛《つのぶえ》」と云う宿屋の酒場。酒場の隅《すみ》には王子がパンを噛《か》じっている。王子のほかにも客が七八人、――これは皆村の農夫らしい。
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宿屋の主人 いよいよ王女の御婚礼《ごこんれい》があるそうだね。
第一の農夫 そう云う話だ。なんでも御壻《おむこ》になる人は、黒ん坊の王様だと云うじゃないか?
第二の農夫 しか
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