王子 値段は――そうだ。そのマントルの代りには、この赤いマントルをやろう、これには刺繍《ぬいとり》の縁《ふち》もついている。それからその長靴の代りには、この宝石のはいった靴をやろう。この黄金細工《きんざいく》の剣《けん》をやれば、その剣をくれても損はあるまい。どうだ、この値段では?
第二の盗人 わたしはこのマントルの代りに、そのマントルを頂きましょう。
第一の盗人と第三の盗人 わたしたちも申し分はありません。
王子 そうか。では取り換《か》えて貰おう。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ]
王子はマントル、剣、長靴等を取り換えた後《のち》、また馬の上に跨《またが》りながら、森の中の路を行きかける。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
王子 この先に宿屋はないか?
第一の盗人 森の外へ出さえすれば「黄金《きん》の角笛《つのぶえ》」という宿屋があります。では御大事にいらっしゃい。
王子 そうか。ではさようなら。(去る)
第三の盗人 うまい商売をしたな。おれはあの長靴が、こんな靴になろうとは思わなかった。見ろ。止《と》め金《がね》には金剛石《ダ
前へ
次へ
全19ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング