(落胆したように坐ってしまう)やはりこの長靴と同じ事だ。
王女 その長靴もどうかしましたの?
王子 これも千里飛ぶ長靴なのです。
王女 黒ん坊の王の長靴のように?
王子 ええ、――ところがこの間《あいだ》飛んで見たら、たった二三間も飛べないのです。御覧なさい。まだ剣《けん》もあります。これは鉄でも切れるはずなのですが、――
王女 何か切って御覧になって?
王子 いえ、黒ん坊の王の首を斬《き》るまでは、何も斬らないつもりなのです。
王女 あら、あなたは黒ん坊の王と、腕競《うでくら》べをなさりにいらしったの?
王子 いえ、腕競べなどに来たのじゃありません。あなたを助けに来たのです。
王女 ほんとうに?
王子 ほんとうです。
王女 まあ、嬉しい!
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ]
突然黒ん坊の王が現れる。王子と王女とはびっくりする。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
黒ん坊の王 今日《こんにち》は。わたしは今アフリカから、一飛びに飛んで来たのです。どうです、わたしの長靴の力は?
王女 (冷淡に)ではもう一度アフリカへ行っていらっしゃい。
前へ
次へ
全19ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング