。話の数《かず》もガラン訳の四倍あり其の他のものの三倍はあるが、手の届かぬ所が無いでもない。しかし兎《と》も角《かく》好訳であるが、私版を五百部刊行しただけで、遂に稀覯書《きこうしよ》の中《うち》に這入《はひ》つて了《しま》つた。ただ一つ特記すべきことは、巻頭にバアトンへの献詞《けんし》が附いてゐることである。
バアトンの訳本も、一千部の限定出版で、容易に手に入り難《がた》い。出版当時十ポンドであつたものが、今日《こんにち》では三十ポンド内外の市価を唱《とな》へられてゐるのは、「一千一夜物語」愛好者の為に聊《いささ》か気の毒である。尤も此のバアトン訳の剽竊版《へうせつばん》(Pirate Edition)が亜米利加《アメリカ》で幾つも出来てゐるが、中身は何《ど》うだらうか。
バアトンの訳本の表題は左の通り。
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A PLAIN AND LITERAL TRANSLATION OF THE ARABIAN NIGHTS ENTERTAINMENTS, NOW ENTITLED THE BOOK OF THE THOUSAND NIGHTS AND A NIGHT
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