ームのしやじでガジヤガジヤとかきまぜながら
細い眼にしは[#「は」に「ママ」の注記]をよせて
コツプの中の薄く濁つた液体を透して空を見るのだ
新しい時計が二時半
彼の時計も二時半
彼と私は
そのうちに逢ふのです
螻蛄《おけら》が這入つて来た
秋になつた――
螻蛄がこそこそ這入つて来た
くだのよ[#「よ」に「ママ」の注記]うなからだを引きずつて這入つて来た
遠慮でもしてゐるよ[#「よ」に「ママ」の注記]うに
頭のところにばかりついてゐる足を動かして
近路をしに部屋に這入つて来たよ[#「よ」に「ママ」の注記]うに
気がねそ[#「そ」に「ママ」の注記]うに歩いて
春
私は椅子に坐つてゐる
足は重くたれて
淋び[#「び」に「ママ」の注記]しくゐる
私は こ[#「こ」に「ママ」の注記]うした私に反抗しない
私はよく晴れた春を窓から見てゐるのです
天国は高い
高い建物の上は夕陽をあびて
そこばかりが天国のつながりのよ[#「よ」に「ママ」の注記]うに
金色に光つてゐる
街は夕暮だ
妻よ――
私は満員電車のなかに居る
私 私はそのとき朝の紅茶を飲んでゐた
私の心
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