てゐる
昼の雨
土手も 草もびつしよりぬれて
ほそぼそと遠くまで降つてゐる雨
雨によどんだ灰色の空
松林の中では
祭りでもありそ[#「そ」に「ママ」の注記]うだ
曇天
遠くの停車場では
青いシルクハツトを被つた人達でいつぱいだ
晴れてはゐてもそのために
どこかしらごみごみしく
無口な人達ではあるがさはがしく
うす暗い停車場は
いつそう暗い
美く[#「く」に「ママ」の注記]しい人達は
顔を見合せてゐるらしい
月が落ちてゆく
赤や青やの灯のともつた
低い街の暗ら[#「ら」に「ママ」の注記]がりのなかに
倒しまになつたまま落ちてしまひそ[#「そ」に「ママ」の注記]うになつてゐる三日月は
いそいでゆけば拾ひ[#「ひ」に「ママ」の注記] そ[#「そ」に「ママ」の注記]うだ
三日月の落ちる近くを私の愛人が歩いてゐる
でも きつと三日月の落ちかかつてゐるのに気がついてゐないから
私が月を見てゐるのを知らずにゐます
彼は待つてゐる
彼は今日私を待つてゐる
今日は来る と思つてゐるのだが
私は今日彼のところへ行かれない
彼はコツプに砂糖を入れて
それに湯をさしてニユ
前へ
次へ
全31ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾形 亀之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング