てゐる


昼の雨

土手も 草もびつしよりぬれて
ほそぼそと遠くまで降つてゐる雨

雨によどんだ灰色の空

松林の中では
祭りでもありそ[#「そ」に「ママ」の注記]うだ


曇天

遠くの停車場では
青いシルクハツトを被つた人達でいつぱいだ

晴れてはゐてもそのために
どこかしらごみごみしく
無口な人達ではあるがさはがしく
うす暗い停車場は
いつそう暗い

美く[#「く」に「ママ」の注記]しい人達は
顔を見合せてゐるらしい


月が落ちてゆく

赤や青やの灯のともつた
低い街の暗ら[#「ら」に「ママ」の注記]がりのなかに
倒しまになつたまま落ちてしまひそ[#「そ」に「ママ」の注記]うになつてゐる三日月は
いそいでゆけば拾ひ[#「ひ」に「ママ」の注記] そ[#「そ」に「ママ」の注記]うだ

三日月の落ちる近くを私の愛人が歩いてゐる
でも きつと三日月の落ちかかつてゐるのに気がついてゐないから

私が月を見てゐるのを知らずにゐます


彼は待つてゐる

彼は今日私を待つてゐる
今日は来る と思つてゐるのだが
私は今日彼のところへ行かれない

彼はコツプに砂糖を入れて
それに湯をさしてニユ
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