よ[#「よ」に「ママ」の注記]うな月が出てゐる

私の静物をぬすんでいつたのはお前にちがひない――
嵐のあとを
お前がいくら猫の眼に化けても

お前に眼鏡をとられるよ[#「よ」に「ママ」の注記]うなことのないやうにさつきから用心してゐる


隣の死にそ[#「そ」に「ママ」の注記]うな老人

隣りに死にそ[#「そ」に「ママ」の注記]うな老人がゐる

どうにも私は
その老人が気になつてたまらない
力のない足音をさせたり
こそこそ戸をあけて這入つていつて
そのまま音が消えてしまつたりする
逢ふまいと思つてゐるのに不思議によく出あふ
そして
うつかりすると私の家に這入つてきそ[#「そ」に「ママ」の注記]うになる


ある来訪者への接待

どてどてとてたてててたてた
たてとて
てれてれたとことこと
ららんぴぴぴぴ ぴ
とつてんととのぷ

んんんん ん

てつれとぽんととぽれ

みみみ
ららら
らからからから
ごんとろとろろ
ぺろぺんとたるるて


一本の桔梗を見る

かはいそ[#「そ」に「ママ」の注記]うな囚人が逃げた
一直線に逃げた

×

雨の中の細路のかたはら
草むらに一本だけ桔梗が咲い
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