茶と

これは――
カステーラのよ[#「よ」に「ママ」の注記]うに
明るい夜だ


散歩

とつぴな
そして空想家な育ちの心は
女に挨拶をしてしまつた

たしかに二人は何処かで愛しあつたことがあつた筈だと言ふのですが

そのつれの男と言ふのが口髭などをはやして
子供だと思つて油断をしてゐたカフヱーのボーイにそつくりなのです


音のしない昼の風景

工場の煙突と それから
もう一本遠くの方に煙突を見つけて
そこまで引いていつた線は

唖が 街で
唖の友達に逢つたよ[#「よ」に「ママ」の注記]うな


十二月の無題詩

十二月のダンダラ
      ――DANDARA

それは
少女の黄色い腰をつつむ
一ペンのネル[#「ネル」に傍点]である

×

穴のあいたよ[#「よ」に「ママ」の注記]うな
十二月の昼の曇天に
私はうつかり相手に笑ひかける



(春になつて私は心よくなまけてゐる)

私は自分を愛してゐる
かぎりなく愛してゐる

このよく晴れた
春――
私は空ほどに大きく眼を開いてみたい

そして
書斎は私の爪ほどの大きさもなく
掌に春をのせて
驢馬に乗つて街へ出かけて行きたい


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