い
夜る[#「る」に「ママ」注記]
青いりんごが一つ
テーブルの上にのつてゐる
はつきりとしたかげとならんで
利口な唖のやうに黙りこんでゐる
そして
この青いりんごは私の大きい足の前に
二十五位のやせた未婚の女のやうにやさしい
雨
四日も雨だ――
それでも松の葉はとんがり
蟲
何処かで逢つたことのある
トゲのやうにやせた
気むづかしやの異人の婆さんが
真面目くさつて畳の間から這ひ出て来た
「コンニチハ 気むづかしやのお婆さん
あなたの鼻に何時鍵をかけませう」
美く[#「く」に「ママ」注記]しい街
私は美しい少女と街をゆく
ぴつたりと寄りそつてゐる少女のかすかな息と
私の靴のつまさきと
少しばかり乾いた砂と
すつかり私にたよつてしまつてゐる少女の微笑
私は
街に酔ふ美しい少女の手の温く[#「く」に「ママ」注記]みを感じて心ひそかに――熱心に
少女に愛を求めてゐる
×
私はいつも街の美しい看板を思ふ
そして 遠く街に憧れて空を見てゐる
無題詩
私の愛してゐる少女は
今日も一人で散歩に出かけます
彼女は賑やかな街を通りぬけて原へ出かけます
そして
彼
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