に美しい顔に化粧をしてやります
うまいところにほくろを入れて 紅もさします
それでも夕方までにはしあげをして
あとは腕をくんで一時間か二時間を一緒に散歩に出かけます

夜は
花や星で飾つた恋文の夜店を出して
恋をする美しい女に高く売りつけます




昼は雨

ちんたいした部屋
天井が低い

おれは
ねころんでゐて蝿をつかまへた


無題詩

懶い手は
六月の草原だ

もの怯えした――人の形をした草原だ

×

寂び[#「び」に「ママ」注記]しげに連なつた五本の指――は
魂を売つてゐた


無題詩

昨夜 私はなかなか眠れなかつた

そして
湿つた蚊帳の中に雨の匂ひをかいでゐた
夜はラシヤのやうに厚く
私は自分の寝てゐるのを見てゐた

それからよほど夜る[#「る」に「ママ」注記]おそくなつてから
夢で さびしい男に追はれてゐた


黄色の夢の話

私の前に立つてゐる人はいつたい誰でせう

チヨツキ[#「チヨツキ」に傍点]に黄色のボタンをつけてゐるからあなたの友人でせうか
それとも
何年か前の私のチヨツキ[#「チヨツキ」に傍点]を着てゐる人でせうか
それが
影ばかりになつて佇んでゐるの
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