日向の男
男のひたいに蝿がとまつてゐます
陽あたりのよい窓にもたれて
男は
今 ちよつと無念無想です
私は 男のそばの湯のみと
男とをくらべて見たいやうな――
うかうかと長閑なものに引入れられや[#「や」に「ママ」注記]うとするのです
昼の部屋
テーブルの上の皿に
りんごとみかんとばなな――と
昼の
部屋の中は
ガラス窓の中にゼリーのやうにかたまつてゐる
一人――部屋の隅に
人がゐる
月を見て坂を登る
はやり眼のやうな
月が
ぼんやりと街の上に登りかけた
若い娘をそとへ出しては
みにくくなります
今夜は「青い夜」です
ハンカチから卵を出します
私は魔術を見てゐた
魔術師は
赤と青の大きいだんだらの服を着てゐた
そして
魔術師は何かごまかさうとしてゐたが
とうとう
又 ハンカチの中から卵を一つ出してしまつた
商に就いての答
もしも私が商《あきなひ》をするとすれば
午前中は下駄屋をやります
そして
美しい娘に卵形の下駄に赤い緒をたててやります
午後の甘ま[#「ま」に「ママ」注記]つたるい退屈な時間を
夕方まで化粧店を開きます
そして
ねんいり
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