」の注記]うに困ってゐたのにちがひない

寒む[#「む」に「ママ」注記]い風に吹かれて
明るい糸屋の店先きに立つて話してゐる幼い女の子達よ
返事に困つてゐる女の子に返事を強ひないで呉れ給へ


一日

君は何か用が出来て来なかつたのか

俺は一日中待つてゐた
そして
夕方になつたが
それでも 暗くなつても来るかも知れないと思つて待つてゐた

待つてゐても
とうとう君は来なかつた
君と一緒に話しながら食はふ[#「ふ」に「ママ」注記]と思つた葡萄や梨は
妻と二人で君のことを話しながら食べてしまつた


白い手

うとうと と
眠りに落ちそ[#「そ」に「ママ」注記]うな
昼――

私のネクタイピンを
そつとぬかうとするのはどなたの手です

どうしたことかすつかり疲れてしまつて
首があがらないほどです


レモンの汁を少し部屋にはじいて下さい


十一月の晴れた十一時頃

じつと
私をみつめた眼を見ました

いつか路を曲がらうとしたとき
突きあたりさうになつた少女の
ちよつとだけではあつたが
私の眼をのぞきこんだ眼です

私は 今日も眼を求めてゐた
十一月の晴れわたつた十一時頃の
室に



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