どの「サ」も知つてゐません
黄色の服はいつまでも立つてゐました

ああ――
どうしたことか
黄色い服には一つもボタンがついてゐないのです


雨降り

地平線をたどつて
一列の楽隊が ぐずぐず してゐた

そのために
三日もつづいて雨降りだ


秋の日は静か

私は夕方になると自分の顔を感じる

顔のまん中に鼻を感じる

噴水の前のベンチに腰をかけて
私は自分の運命をいろいろ考へた


夕暮に立つ二人の幼い女の子の話を聞く

夕暮れの街に
幼い女の子が二人話をしてゐます

「私 オチンチン[#「オチンチン」に傍点]嫌い[#「い」に「ママ」注記]よ」と醜い方の女の子が云つてゐます
「………………」もう一人の女の子が何んと云つたか
私はそこを通り過ぎてしまひました

きつと――
この醜い方の女の子はちよつと前まで遊んでゐた男の子にあまり好かれなかつたのだ
そして
「私オチンチン[#「オチンチン」に傍点]嫌い[#「い」に「ママ」注記]よ」と云はれてゐるもう一人の女の子は男の子に好かれたために当然オチンチン[#「オチンチン」に傍点]好きなことになつてしまつてその返事のしよ[#「よ」に「ママ
前へ 次へ
全31ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
尾形 亀之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング