ひらけ
白い大きな花が私から少し離れて咲いてゐる
私の立つてゐるところは極く小さい島のもり上つた土の上らしい

×

私は鉛のやうに重も[#「も」に「ママ」注記]たい

×

死んだやうに静かすぎる

私は
消えてしまい[#「い」に「ママ」注記]さうな気がする

×

たくさんの――
烏だ
たくさんのねずみだ

一本の煙突だ

×

一人の馬鹿者だ

夢がとぎれてゐる


二人の詩

薄氷のはつてゐるやうな
二人

二人は淋みしい
二人の手は冷め[#「め」に「ママ」注記]たい

二人は月をみている


顔が

私は机の上で顔に出逢ひます
顔は
いつも眠むさうな喰べすぎを思はせる
太つた顔です

――で

それに就いて ゆつたり煙草をのむにはよい そして
ほのぼのと夕陽の多い日などは暮れる

×

夜る[#「る」に「ママ」注記]
燈を消して床に這入つて眼をつぶると
ちよつとの間その顔が少し大きくなつて私の顔のそばに来てゐます


或る話
(辞書を引く男が疲れてゐる)

「サ」の字が沢山列らんでゐた
サ・サ・サ・サ・サ・・・・・・と

そこへ
黄色の服を着た男が
路を尋ねに来たのです


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